祭竒洞

姑らく妄りに之を志す。

『増補改訂版 ヴィイ調査ノート』初版→第二版への主要改訂内容


初版→第二版への主要改訂内容、および補遺のPDFデータ : (改訂内容&補遺)

B5にプリントアウトして二つ折りにして本に挟むor貼付 等の遣い方を推奨しております。

なお、第二版は

◎2014年11月23日(日)
コミティアX-4
◎スペースNo.  X407
◎「しかま家」

にて頒布致します。詳細は次記事にて。


以下くだくだしい説明。

『増補改訂版 ヴィイ調査ノート』初版分があらかた売り切れてしまいました。
何人かにお渡ししなければならないので、在庫リスクに怯え慄きつつ増刷しようと再度本文を確認したところボロボロと誤りやら不足やらを発見したのと、以前から「ここ誤植じゃねぇ?」とツッコミを受けていたのと、新規情報がいくつか手に入ったので、せっかくだから中身を一部改訂した次第です。
頁数が変動するような情報は、仕方がないので補遺として別ペーパーに致しました。

ってなわけで、改訂内容および補遺内容を書き残しておきます。

以下、上記PDFと同じ文言を雑に貼りつけただけです。


『増補改訂版 ヴィイ調査ノート』初版→第二版 主要改訂内容

◎9頁下段最終行:タイプミスの訂正
 (旧)そのkなった
 (新)その元になった

◎34頁上段12行目:ロシア語をカタカナ表記に合わせ主格に訂正
 (旧)風=ヴェーテェル(ветром)
 (新)風=ヴェーテェル(ветер)

◎61頁上段9行目:表現の修正
 (旧)冒頭に書いたとおり、
 (新)2‐1に書いたとおり、

◎82頁上段10行目:出典の追記
 (旧)(鳥取縣圖書館協會、一九五一)
 (新)(鳥取縣圖書館協會、一九五一 牧野出版社より一九七四に復刻)

◎82頁下段5行目:内容の一部修正(復刻版が出典の可能性を考慮)
 (旧) 水木がほぼ同内容の短編の題名を変えることは珍しくないが(中略)
    それにちなんだものではないか、と推測できる。
     ただし同書をいつ水木が入手したかは不明である ため、前述の説は
    あくまで推測の域を出ない。
 (新) 仮に水木が復刻版ではなく原書を「死人つき」執筆以前に入手して
    いたとすれば、以下の推測が可能である。
     水木がほぼ同内容の短編の題名を変えることは珍しくないが(中略)
    それにちなんだものではないか。
     根拠の薄い推測ではあるが、念のため記載しておく。

◎85頁上段最終行:
 (旧)『Вий』(一九六七、モスフィルム)
 (新)アレクサンドル・プトゥシコ総監督『妖婆 死棺の呪い
    (アイ・ヴィー・シー、二〇一三)

◎101頁下段7行目:
 (旧)土の中のおじいさん
 (新)土のなかのおじいさん

◎104頁上段最終行:
 (旧)ただしここでの掲載が初出であるかは確認が取れていない。
 (新)初出であることを『ゲゲゲの鬼太郎TVアニメDVDマガジン』
    第1巻第2号(講談社、二〇一三)にて確認した。

◎129頁〜:
 (追加)荻原直正編著『因伯傳説集』(牧野出版社、一九七四) ※ 復刻本
     『ゲゲゲの鬼太郎TVアニメDVDマガジン』第1巻第2号
      講談社、二〇一三

◎143頁 XANO明朝
 (修正)白髪増量中 (http://www.asahi-net.or.jp/~sd5a-ucd/



※改行位置他、ごく軽微な改訂については、記載を割愛した。

『増補改訂版 ヴィイ調査ノート』 第二版 補遺

II
平田弘史の漫画「おれたちは生き苦しいのだ」(『平田弘史のお父さん物語』に収録、初出…『週刊少年キング』一九七一年第53号、少年画報社)は時代劇であるが、ストーリーの一部に「ヴィイ」が取り入れられていると見られる。魔物が夜毎に主人公を襲うが、しめなわの輪の中には入ることができず夜明けの鐘が鳴ると逃げ帰る、最後には夜明けを迎えてしまったため壁や地面にはりつき、めりこんでしまう、といった類似点があるが、魔女やヴィイに当たるものは登場しない。

III
水木しげる「異形の者」および「死人つき」は「ヴィイ」の後半、三晩の祈祷の部分を翻案・漫画化しているが、『水木しげる叢書別巻3 水木しげる単行本未収録作品集1』(籠目舎、一九九一)(奥付等がないため、書誌情報は基本的に平林重雄『水木しげると鬼太郎変遷史』(YMブックス、二〇〇七)に依った)に、それらの漫画では省略されている「ヴィイ」前半部を翻案漫画化したと思しきコマが3コマ収録されている。
・旅の僧と思われる青年があばら家に向かって「ごめん下さい」と声をかけるコマ
・小屋の中から覗く(おそらく)老婆に僧が「おそれ入ります?」と話しかけ、
老婆が無言「……………………」で応じるコマ
・老婆が僧の肩に乗り、僧が汗をかきながら「こいつひょっとしたら下北の伝説に
ある「「妖婆(やまんば)」かな?」「「妖婆」だとすれば」と考えるコマ
同書には「映画通のファンなら、この場面を見ただけであるソ連映画を想い出すはず。「妖婆死棺の呪い(ヴィー)」 奇才水木しげるの手によって完全劇画化!」と書かれているが、その他の情報がなく、書かれた時期や他に原稿が残っているのかは不明である(平林前掲書に依れば未発表原稿)。なお「妖婆」という表現は水木が参考にしたと思しき原卓也訳でも同様の場面で用いられており、映画との先後を決める根拠にはならない。
主人公の僧が「死人つき」のような少年ではなく「異形の者」と同様青年であることから、もともと「異形の者」の一部であった可能性が考えられる。ただし「異形の者」の僧は伝説などを信じないキャラクターとして描かれているため、怪異に対するスタンスが3コマ目の発言と異なる。
現状詳細は不明であるが、今後新たな資料が出てくることを期待したい。

参考資料
平田弘史平田弘史のお父さん物語』(青林工藝舎、二〇〇五)
平林重雄『水木しげると鬼太郎変遷史』(YMブックス、二〇〇七)
水木しげる水木しげる叢書別巻3 水木しげる単行本未収録作品集1』(籠目舎、一九九一)


※ 本編内、国外の参考文献(134頁〜)はイ、ロ、ハ……と続くところ、
ソ の後が ケ となり、順番が飛んでいる。
誤りであるが、大勢に影響がないこと、訂正すると却って初版との整合に混乱を生ずる可能性があることから、訂正は行わない。